基礎解説
空室率と家賃下落の組み合わせで手残りがどう変わるかを、架空の数字で確認し、収支計画への織り込み方を整理します。
賃貸経営の収入は、満室で家賃が変わらないという前提では成り立たないことがあります。入居者の入れ替わりで空室の期間が生まれ、募集条件によっては家賃を見直すこともあります。この記事では、仮の数字で感度を見ながら、計画への織り込み方を考えます。
空室と家賃下落は別のリスク
空室は「入居者がいない期間」の問題で、収入が一時的に止まります。家賃下落は「入居者がいても受け取る額が下がる」問題で、長期にわたって収入を押し下げます。性質が異なるため、別々に、また組み合わせて見る必要があります。
仮の数字で手残りを見る
仮に、満室時の年間家賃収入が120万円、年間の経費とローン返済の合計が95万円で、これらは変わらないとします。いずれも説明用の架空の数字です。
| 空室率 | 家賃下落 | 年間の家賃収入 | 年間の手残り |
|---|---|---|---|
| 0% | 0% | 120.0万円 | 25.0万円 |
| 5% | 0% | 114.0万円 | 19.0万円 |
| 10% | 0% | 108.0万円 | 13.0万円 |
| 20% | 0% | 96.0万円 | 1.0万円 |
| 5% | 10% | 102.6万円 | 7.6万円 |
| 10% | 10% | 97.2万円 | 2.2万円 |
満室・下落なしなら手残りは25.0万円ですが、空室率が20%になると1.0万円まで縮みます。さらに空室率10%と家賃10%下落が重なると2.2万円です。収入は19%減っただけでも、手残りは25.0万円から2.2万円へと約91%減っています。
この表から読み取れるのは、返済や経費などの固定的な支出が大きいと、収入の小さな変動が手残りに大きく響くということです。逆に、借入が少ない物件は余力が大きい傾向があります。
計画に織り込む実務的な方法
- 満室前提ではなく、一定の空室率を見込んだ収入で収支を組む。
- 家賃が下がる場合と下がらない場合の2通りを試算する。
- 空室期間の分の返済と経費をまかなえる予備資金を、手元に別に置く。
- 周辺の募集家賃や入居状況を、公開されている情報で確認する。
- 築年数が進むと、設備更新や原状回復の費用も増えやすい点を加味する。
空室率の見込みは物件の立地・種類・築年数で大きく違います。数字を一律に当てはめず、自分の検討する物件の条件で見直してください。不動産キャッシュフロー計算で、空室率や家賃を変えながら試すことができます。利回り計算ツールとあわせて使うと、表面の数字との差が見えやすくなります。
収支がゼロになる入居率を知る
空室にどこまで耐えられるかを知るには、収支がちょうどゼロになる入居率(損益分岐の入居率)を計算します。上の仮の数字では、年間の支出が95万円、満室時の収入が120万円なので、95÷120で入居率が約79.2%を下回ると、手残りがマイナスになります。言い換えれば、空室率が約20.8%を超えると赤字になる計算です。
この水準が低いほど、空室や家賃の下落に対する余裕が大きいといえます。家賃下落も同時に考えるなら、満室時の収入が減る分だけ、この余裕はさらに小さくなります。検討する物件で同じ計算をしてみると、リスクの大きさを自分の数字で見積もることができます。
入居者が入れ替わるときの費用も、空室の影響として見ておく必要があります。仮に月10万円の部屋で、入れ替えのたびに原状回復や募集の費用が家賃2か月分の20万円かかり、年1回入れ替わるとします。すると上の満室時の手残り25万円は、20万円を引いて5万円です。空室の期間の収入減と合わせると、さらに小さくなります。家賃を下げずに空室を短くする工夫、たとえば設備の見直しや募集条件の調整にも費用がかかるため、効果と費用の両方を見ておくことが大切です。
家賃の下落は、築年数が進むほど新築時の水準を維持しにくくなるという一般的な傾向があります。ただし、立地や改修の内容によって差が大きく、一律には語れません。
考えるときの視点とリスク
本記事の数字は架空であり、実際の空室率や家賃の変化を予想するものではありません。現実には、空室が続いて募集条件を変えたり、設備を入れ替えたりと、費用が追加で発生する場合もあります。
また、一棟物件と区分では、空室が収入に与える影響の出方が異なります。この違いは比較ページも参考にしてください。
手残りがマイナスになった時に、自己資金で補えるか、補えない場合にどうするかを、購入前に決めておくことが大切です。条件を厳しめに見ても成立するなら検討を進め、成立しないなら見送るか、条件を見直す、という考え方が基本になります。方針は編集方針に記しています。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。