基礎解説
リフォーム費用の回収期間を、家賃改善と空室短縮の仮の数字で計算し、判断の視点を整理する。
入居者が退去したあと、リフォームをして家賃を上げたり、入居者が決まりやすくしたりする選択肢があります。ただ、工事にはまとまった費用がかかります。この記事では、リフォーム費用が家賃の改善でどのくらいの期間で回収できるのかを、仮の数字で考える方法を整理します。
リフォームで期待できる効果
リフォームの効果は、大きく二つに分けられます。一つは家賃を上げられる可能性、もう一つは空室の期間を短くできる可能性です。どちらも、地域の需要や物件の状態、競合物件との比較によって結果が変わり、見込みどおりになる保証はありません。
- 家賃の改善:設備や内装を新しくすることで、募集家賃を調整できる場合がある
- 空室期間の短縮:内見時の印象が良くなり、入居者が決まりやすくなる場合がある
- 入居期間への影響:快適さが増し、長く住まれる場合もある
仮の数字で回収期間を計算する
仮に、リフォーム費用が80万円で、家賃を月4,000円、つまり月0.4万円上げられたとします。年間の増収は0.4×12=4.8万円です。回収期間は80÷4.8=約16.7年となります。年間の増収を費用で割ると約6.0%で、これは費用に対する年間の増収の割合です。
ここに、空室期間が年に1か月短くなる効果を加えます。月額家賃が6万円とすると、年間6万円の増収にあたります。合計の増収は4.8+6=10.8万円、回収期間は80÷10.8=約7.4年に縮まります。費用に対する割合は約13.5%です。
| ケース(仮) | 年間の増収 | 回収期間 |
|---|---|---|
| 家賃のみ改善(+0.4万円/月) | 4.8万円 | 約16.7年 |
| 家賃改善+空室1か月短縮 | 10.8万円 | 約7.4年 |
別の仮の例として、費用120万円で家賃が月0.5万円上がる場合、年間6万円の増収で、回収まで120÷6=20年かかります。工事の内容や費用が変わるだけで、結果は大きく変わることが分かります。
費用対効果を見るときのポイント
- 回収期間だけでなく、設備の寿命も見る:回収前に再び交換が必要になるなら、効果は小さくなる
- 見積もりは複数社から取り、工事内容を比べる
- 家賃の上昇見込みは、近隣の募集事例などを調べて根拠をもつ
- 工事期間中の空室による収入減も費用として考える
- 必要な修繕と、あると良い改善を分けて考える
設備の故障や雨漏りへの対応のように、収益改善を目的としない修繕もあります。これらは費用対効果で測れない性質のものです。改善のための支出と、維持のための支出を分けて整理すると、判断がしやすくなります。
収支全体への組み込み方
リフォーム費用を自己資金で出すのか、借入で賄うのかによって、手元に残るお金への影響は変わります。借入で賄う場合は、返済額の増加分と家賃の増収を比べておく必要があります。不動産キャッシュフロー計算に、費用や家賃の前提を入れて試すことができます。また、物件の価格に対する収益の割合は利回り計算ツールでも確認できます。
前提を厳しくした場合も見てみます。家賃の上昇が月0.2万円にとどまり、空室短縮の効果もなかったとすると、年間の増収は0.2×12=2.4万円で、費用80万円の回収は80÷2.4=約33.3年です。このとき、設備の寿命のほうが先に来る可能性があり、収支の改善につながらない場合もあります。
リフォームを見送る、費用を抑えた部分的な改修にする、といった選択肢も比較対象になります。例えば、壁紙の張り替えと設備の一部交換だけで30万円に抑えられるなら、同じ年間2.4万円の増収でも、回収は30÷2.4=12.5年です。工事の範囲によって、費用対効果は大きく変わります。
考えるときの視点とリスク
リフォームに使ったお金が、家賃の増収として戻ってくる保証はありません。家賃が上がらない、想定より空室が長引く、といった場合もあります。次のような視点で、前提を厳しめに置いて考えるとよいでしょう。
- 家賃の増額が実現しなかった場合に、収支が成り立つか
- 費用を回収する前に、退去や設備の故障が起きる可能性
- 地域の賃貸需要や競合物件の状況は変化し得るため、定期的に確認する
- 過剰な設備にならないよう、ターゲットとする入居者像を意識する
- 工事の品質や保証の範囲を、契約前に確認する
ここで示した数字はすべて仮のものであり、実際の費用や家賃を示すものではありません。当サイトの考え方は編集方針に記載しています。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。