比較・ツール解説
同じ36万円を積立と一括で投じる仮の例を比べ、値動きの経路によって結果が入れ替わることを示す。
「毎月少しずつ積み立てるのと、まとまった資金を一度に投じるのと、どちらがよいのか」はよく話題になる疑問です。結論から言えば、どちらが有利かは、その後の値動きの経路で変わります。この記事では、仮の数字で結果が入れ替わる様子を確かめます。
比べ方の前提をそろえる
仮に、投資に回せる資金が36万円あるとします。次の2つの方法を比べます。
- 一括投資:1か月目に36万円をすべて投じる。
- 積立投資:1か月目から6か月目まで、毎月6万円ずつ(合計36万円)投じる。
価格は仮に、1か月目を100として、6か月目まで次の3通りの動きをするとします。手数料・税・分配金は考えず、評価は6か月目の価格で行います。これは説明用の数字であり、将来の値動きを示すものではありません。
3つの経路で結果を比べる
| 仮の値動き | 一括投資の評価額 | 積立投資の評価額 | 差 |
|---|---|---|---|
| A:ゆるやかに上昇(100→110) | 396,000円 | 377,543円 | 一括が18,457円多い |
| B:ゆるやかに下落(100→90) | 324,000円 | 341,495円 | 積立が17,495円多い |
| C:一度大きく下がって戻る(100→80→110) | 396,000円 | 421,167円 | 積立が25,167円多い |
一括投資は、最初の価格で36万円分を買うため、評価額は「6か月目の価格÷最初の価格×36万円」で決まります。積立投資は、毎月の価格で買う量が変わり、価格が低い月には多く、高い月には少なく買うことになります。
結果が分かれる理由
Aのように価格が上がり続けた場合は、早く多くを投じた一括投資の評価額が高くなっています。Bのように下がり続けた場合は、投じるのを分けた積立投資の損失が小さくなっています。Cのように一度下がってから戻る場合は、安い時期に多く買えた積立投資が上回っています。
ただし、実際にどの経路になるかは、事前にはわかりません。どちらの方法も、将来の価格を当てるための手段ではありません。ここで見ているのは、「資金を投じる時期を分けるかどうか」で、結果の出方が違ってくるという点です。
方法ごとの向き不向き
- 積立が向きやすい条件:まとまった資金がなく収入から継続的に投じる場合。価格変動を見ながら一度に投じることに心理的な負担を感じる場合。
- 一括が向きやすい条件:すでにまとまった資金があり、長い期間を市場に置く予定の場合。投じていない期間の機会を重視する場合。
- どちらでもない選択:資金を数回に分けて投じる方法もあります。
積立の結果の幅は積立シミュレーションで、期間や利率の違いは複利計算ツールで確かめられます。
積立ならではの特徴を数字で見る
毎月同じ金額を買う積立では、価格が低い月は多くの口数を、高い月は少ない口数を買うことになります。上の経路Cで見ると、6回の購入価格の単純平均は95円ですが、毎月6万円ずつ買った場合の平均取得単価は約94.0円となり、単純平均より低くなります。これは、価格が低い月に口数が多く入るためです。
ただし、平均取得単価が低いことと、最終的に利益が出ることは別の話です。購入後に価格がさらに下がり続ければ、評価額は取得額を下回ります。仕組みの特徴であって、損失を避ける仕組みではありません。
上の例は6か月という短い期間でした。積立が長期にわたる場合は、積立の後半に入れた資金ほど、運用されている期間が短くなります。一括投資は、投じた直後から全額が市場にさらされますが、積立は、時間をかけて徐々に市場にさらされる形になります。
心理面でも違いがあります。一括投資は、投じた直後に価格が下がると、「別の時期にすればよかった」という後悔が生じやすい面があります。積立は、毎月機械的に買うため、時期を選ぶ判断を減らせる反面、価格が下がり続ける期間も買い続ける必要があり、続けることへの負担を感じる人もいます。
選ぶ際は、数字の優劣だけでなく、「価格が下がったときに自分が継続できるか」という実行面も含めて考えると、現実的な判断につながります。
なお、毎月の購入額を決めるときは、収入や支出の変動で続けられなくなることがないかも確認しておくとよいでしょう。無理のない金額で続けることが、積立の前提になります。
考えるときの視点とリスク
この例は6か月という短い期間の単純化したものです。実際には、期間の長さ、価格の動き方、手数料、税、投じる資金の性格によって結果は変わります。また、積立で資金を後回しにしている期間は、その資金が運用されていない(または預金などで置かれている)ことも考える必要があります。
どちらの方法でも、元本割れの可能性はあります。「どちらが有利か」よりも、自分の資金の状況と、値動きに耐えられるかを基準に選ぶことが大切です。考え方の背景は編集方針もご覧ください。
この記事について:「比較・ツール解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。