基礎解説
損益計算書と貸借対照表の役割と基本的な見方を、架空の数字を使って整理します。
株式投資の入門書では「決算書を読みましょう」とよく言われますが、数字が並ぶ表に最初は戸惑う人も多いものです。実は、基本となる2つの表の役割を押さえるだけで、見るべき場所はかなり絞れます。この記事では、損益計算書と貸借対照表の基本を、架空の数字を使って整理します。
決算書の全体像と3つの表
上場企業が公表する決算書の中心は、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュ・フロー計算書の3つです。損益計算書は「一定期間にいくら稼いだか」、貸借対照表は「ある時点で何を持ち、どう資金を調達しているか」、キャッシュ・フロー計算書は「現金がどう増減したか」を示します。
ここでは前半の2つに絞ります。期間の成績表がP/L、時点の財産一覧がB/Sと覚えると混同しにくくなります。
損益計算書は利益が段階的に示される
損益計算書は、売上高から費用を順に引き、利益を段階ごとに示します。段階ごとに意味が違うため、どの利益を見ているかを意識することが大切です。
- 売上総利益:売上高から売上原価を引いたもの。商品そのものの儲けを表します。
- 営業利益:売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたもの。本業の儲けを表します。
- 経常利益:営業利益に利息など本業以外の収支を加減したもの。
- 当期純利益:特別な損益や税金を反映した最終的な利益です。
たとえば架空のA社の売上高が100億円、売上原価が60億円、販売費及び一般管理費が30億円だとします。売上総利益は100−60=40億円、営業利益は40−30=10億円です。営業利益を売上高で割った営業利益率は10÷100=10%になります。
貸借対照表は資産・負債・純資産の三つ
貸借対照表は、左側に資産、右側に負債と純資産を並べ、両者の合計が一致する構造です。資産は会社が持つもの、負債は返す必要のある資金、純資産は株主に帰属する部分です。
| 項目 | 架空のA社(億円) |
|---|---|
| 資産合計 | 200 |
| 負債合計 | 120 |
| 純資産 | 80 |
| 自己資本比率(純資産÷資産合計) | 40% |
200=120+80で、左右が一致しています。自己資本比率は80÷200=40%です。この比率が高いほど、返済義務のある資金への依存が小さいと読めますが、適正な水準は業種で異なります。
2つの表をつなげて読む
2つの表は別々のものではなく、つながっています。損益計算書で出た純利益は、配当などを除いて貸借対照表の純資産に積み上がります。そのため、利益が続いているのに純資産が増えない場合は、配当や自社株買い、評価の変動などの理由がないか確認できます。
また、前年や数年分を並べて見ると、単年では分からない傾向が見えます。売上高が増えていても営業利益率が下がっていれば、費用が先に増えている可能性があります。ただし、これは理由を調べるきっかけであり、それだけで良し悪しは決まりません。
読むときの注意点
- 会計基準(日本基準、IFRSなど)により、項目名や利益の定義が異なる場合があります。
- 同じ業種どうしで比べないと、数字の意味がずれます。
- 一時的な損益(資産売却益など)が最終利益を大きく動かすことがあります。
- 決算書は過去の実績であり、将来の業績を示すものではありません。
複数の企業を並べて見たいときは、当サイトの比較ツールや比較ページも参考にしてください。
実際に決算書を開くときは、いきなり細部を読むのではなく、手順を決めると迷いません。たとえば次の順番です。
- 損益計算書の売上高と営業利益の推移を、3~5年分並べて眺める。
- 営業利益率が上がっているか下がっているかを確認する。
- 貸借対照表で、総資産に対する純資産の割合と、借入金の増減を見る。
- 気になった点があれば、決算短信の説明文や注記で理由を探す。
なお、利益が出ていても手元の現金が増えているとは限りません。売上が入金される前の段階や、設備への支出などで、利益と現金の動きにずれが生じるためです。このずれを確認するのがキャッシュ・フロー計算書です。損益計算書と貸借対照表に慣れたら、次の段階として読み進めるとよいでしょう。
用語に慣れるには、実際の決算短信を1社分だけ丁寧に読んでみるのが近道です。表の項目名と本文の説明を照らし合わせると、数字の意味がつかみやすくなります。分からない用語は、その都度確認する習慣をつけましょう。
考えるときの視点とリスク
決算書は企業の状態を知る有力な材料ですが、読み解きには限界があります。数字は過去の結果であり、会計上の見積りや判断が含まれます。単独の指標で良し悪しを決めず、複数の指標や期間を組み合わせ、公表された決算短信や有価証券報告書の注記も確認しましょう。
また、読み方を知っていても、投資結果が保証されるわけではありません。元本が割れる可能性は常にあります。当サイトの情報の扱いについては編集方針をご確認ください。判断は、ご自身の目的や資金状況に照らして行ってください。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。