基礎解説
株価が大きく下がる局面に備え、数字で下落の影響を確認し、行動のルールを事前に決めておく考え方を整理する。
投資を続けていれば、株価が大きく下がる局面にはいずれ出会います。そのとき慌てて判断すると、本来の計画から外れた行動をとりやすくなります。この記事では、下がってから考えるのではなく、下がる前に決めておくことを整理します。
大きく下がる局面は珍しいことではない
株式は価格が変動する資産であり、短い期間で大きく下がることがあります。これは投資の性質そのもので、いつ起こるかを事前に言い当てることはできません。そのため「起きないこと」を前提にするのではなく、「起きたときにどうするか」を平時に考えておく方が現実的です。
リスクとは、値動きの幅(ぶれの大きさ)を指すとされます。下落は、そのリスクが目に見える形で現れたものと言えます。
下落の大きさを数字で確認しておく
下落と回復の関係は対称ではありません。仮に100万円の評価額が30%下がると70万円になります。ここから100万円に戻すには、70万円に対して約42.9%の上昇が必要です(100÷70≒1.429)。下がった割合より、戻すために必要な割合の方が大きくなります。
| 下落率 | 仮の評価額(元100万円) | 元に戻すのに必要な上昇率 |
|---|---|---|
| 10% | 90万円 | 約11.1% |
| 20% | 80万円 | 25% |
| 30% | 70万円 | 約42.9% |
| 50% | 50万円 | 100% |
この表は計算上の関係を示すもので、実際にどれだけの期間で戻るかを示すものではありません。戻らない場合もあります。
事前に決めておく4つのこと
- 許容できる下落幅:評価額が2割、3割下がっても生活に支障が出ない金額かどうか。
- 生活資金との分離:数年内に使う予定のお金を、値動きのある資産に入れていないか。
- やることと、やらないこと:積立は続ける、売買は一定期間しない、など書き出しておく。
- 見直す条件:下落幅ではなく、目的や家計の状況が変わったときに見直す、と決めておく。
書き出すことで、感情が揺れたときに戻れる基準になります。紙やメモに残しておくと、後から自分の判断を振り返ることもできます。
下落時にとりやすい行動と、その注意点
人は損失を強く感じやすく、下落の最中に「これ以上減るのが怖い」と売却したくなることがあります。一方で、売却すれば損失が確定し、その後に価格が戻っても取り戻せません。逆に、下がったから追加で投資しようと考える場合も、資金に余裕がなければ生活を圧迫します。
どちらが正しいかを断定することはできません。大切なのは、その時の気分ではなく、事前に決めた計画に沿って判断することです。積立を続ける考え方については、積立シミュレーションで、価格が変動した場合の値動きを確認できます。
分散と現金の持ち方で影響を和らげる
資産を株式だけに集中させず、債券や現金など値動きの性質が異なるものを組み合わせると、全体の変動を小さくしやすくなります。ただし、分散しても下落を完全に避けることはできません。また、生活防衛資金を現金で確保しておけば、下落時に投資資産を売らずに済む可能性が高まります。
資産ごとの比較は3資産比較ツール、運営の考え方は編集方針もあわせてご覧ください。
具体例として、次のような書き出しが考えられます。「毎月の積立額は変えない」「評価額を確認するのは月に1回までにする」「生活費の6か月分は現金で別に持つ」「3割下がっても売却の判断は1週間置く」。これらは一例であり、正解ではありません。自分の収入の安定度や家族構成によって、適切な内容は異なります。
ルールを決める際は、過去に大きく下がった場面を想像するだけでなく、そのとき自分の収入や支出がどう変わりうるかも考えてみてください。景気が悪いときは収入に影響が出る場合もあるため、投資資産の下落と家計の悪化が重なる可能性があります。その場合に備えた現金の余裕が、投資を続けられるかどうかを左右します。
最後に、ルールを決めたあとの点検方法です。半年に一度などの頻度で、決めた内容と現在の家計の状況にずれがないかを確認します。収入の増減、家族構成の変化、近く使う予定のお金の発生などがあれば、許容できる下落幅も変わります。
考えるときの視点とリスク
事前のルールは、将来の相場を当てるためのものではなく、自分の行動をぶれにくくするためのものです。ルールを決めても、実際に大きな下落を経験すると気持ちが変わることがあります。そのため、無理のない金額から始め、想定より下がったときの自分の反応を確かめながら調整することが現実的です。
また、事前に決めたルールが自分の状況に合わなくなることもあります。定期的に見直す前提で運用してください。投資元本は保証されず、損失が出る可能性があります。最終的な判断はご自身で行い、必要に応じて専門家にもご相談ください。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。