基礎解説
不動産投資で頻出する用語を、仮の数字の例とあわせて整理する。
目次
不動産投資の資料や記事には、略語や専門用語が多く登場します。意味があいまいなまま数字を見ると、条件の違う物件を同じ物差しで比べてしまうことがあります。ここでは基本用語を、仮の数字の例とあわせて整理します。数字はすべて説明用の架空のもので、実際の物件や相場を示すものではありません。
例に使う仮の物件
以降の説明では、次の架空の条件を使います。
- 物件価格:2,000万円
- 満室時の年間家賃収入:150万円(月12.5万円)
- 年間の運営費(管理費・修繕費・固定資産税など):30万円
- 借入額:1,600万円
- 年間のローン返済額:90万円
収益に関する用語
表面利回り
満室想定の年間家賃収入を物件価格で割った値です。例では150万円 ÷ 2,000万円 = 7.5%です。空室や費用を含まないため、あくまで入口の目安です。
空室率
貸せる戸数や期間のうち、空いている割合です。例で空室率を5%と置くと、見込める家賃は150万円 × 0.95 = 142.5万円になります。空室率は地域や物件で大きく異なり、一定とは限りません。
NOI(純収益)
空室を織り込んだ収入から運営費を引いた、ローン返済前の収益です。例では142.5万円 − 30万円 = 112.5万円です。NOIを物件価格で割ると112.5万円 ÷ 2,000万円 = 5.625%で、表面利回りより低く出ます。
実質利回り
費用を差し引いた利回りを指す言葉ですが、購入時の諸費用を含めるか、運営費をどこまで含めるかが資料ごとに異なります。定義を確認する習慣が要る用語の一つです。
借入・購入時に関する用語
LTV(借入比率)
物件価値に対する借入額の割合です。例では1,600万円 ÷ 2,000万円 = 80%です。LTVが高いほど自己資金は少なく済みますが、価格が下がったときに売却額が残債を下回る可能性も高まります。
DSCR(返済余裕度)
NOIを年間の元利返済額で割った値です。例では112.5万円 ÷ 90万円 = 1.25です。1を下回ると、収益だけでは返済をまかなえない状態を意味します。金融機関が重視する指標とされますが、基準は機関ごとに異なります。
諸費用
物件価格とは別にかかる費用の総称です。仲介手数料、登記関連費用、ローンの事務手数料、各種税金などが含まれます。仮に価格の7%とすると、2,000万円なら140万円です。種類の整理は別の記事でも扱っています。
キャッシュフロー
手元に残る現金の収支です。例ではNOI 112.5万円からローン返済90万円を引いた22.5万円が、税金などを考えない年間の概算になります。
用語を使うときの注意点
| 用語 | 見るときの注意 |
|---|---|
| 表面利回り | 空室・費用・諸費用を含まない |
| NOI | どの費用を含めた数字か確認する |
| LTV | 分母が購入価格か評価額かで変わる |
| DSCR | 金利が変わると返済額も変わる |
このほか、資料には「想定利回り」「現況利回り」という表記もあります。前者は空室部分に想定の賃料を置いた数字、後者は現在の入居状況に基づく数字という使い分けが多いものの、定義は資料ごとに異なります。注記を読んで、何を前提にした数字かを確かめてください。
利回りの計算は利回り計算ツール、返済後の収支は不動産キャッシュフローツールで、条件を変えながら確認できます。
用語を組み合わせて読む例
表面利回りだけを見ると、見え方が変わる例を示します。どちらも価格は2,000万円の架空の物件です。
| 項目 | 物件A | 物件B |
|---|---|---|
| 満室時の年間家賃 | 160万円 | 130万円 |
| 表面利回り | 8.0% | 6.5% |
| 仮の空室率 | 10% | 5% |
| 仮の年間運営費 | 50万円 | 20万円 |
| NOI | 94万円 | 103.5万円 |
| NOI ÷ 価格 | 4.7% | 5.175% |
物件Aは160万円 × 0.9 − 50万円 = 94万円、物件Bは130万円 × 0.95 − 20万円 = 103.5万円です。表面利回りではAが高いものの、空室と運営費を置くと順序が入れ替わります。もちろんこの空室率や費用はここで置いた仮定で、実際の物件ごとに確認が必要です。用語の違いは、こうした見え方の差につながります。
考えるときの視点とリスク
用語を知っていても、入力する数字が楽観的であれば結果も楽観的になります。空室率や運営費は幅を持たせて試算し、条件が悪い場合でも返済を続けられるかを確認する視点が大切です。表面利回りの高さだけで判断せず、費用や借入条件を含めた全体像で見ることになります。
また、同じ用語でも資料によって定義が違う場合があります。比較するときは計算式をそろえてください。判断の前提や情報の扱いは編集方針にも記載しています。個別の判断が必要な場合は、専門家への相談も選択肢です。
指標はそれぞれ一つの側面しか表さないため、複数を組み合わせて見ます。たとえば、利回りが高くても返済余裕度が低ければ、収支の変動に弱い可能性があります。反対に、返済余裕度が高くても、価格に対する収益が低ければ、資金の使い道として十分かを考え直す余地があります。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。