基礎解説
仮定の数値を使い、信託報酬の差が長期の運用結果にどのくらい影響するかを試算して整理します。
投資信託を保有している間は、信託報酬という運用コストが継続的にかかります。1年あたりの率は小さく見えますが、長期になると運用結果への影響が積み重なります。この記事では、仮の数値を使った試算で、その大きさを確認します。
信託報酬とは
信託報酬は、投資信託を持っている間、純資産総額から日々差し引かれる費用です。運用会社、販売会社、信託銀行に配分されます。年率で表示されるため、保有額が大きいほど、金額は大きくなります。購入時に別途かかる手数料とは別のものです。
信託報酬は基準価額(投資信託の値段)から日々差し引かれる形で反映されるため、請求書が届くわけではなく、気づきにくいという特徴があります。
仮定の数値での試算
ここでは、次のような仮定を置きます。これは説明のための数字であり、将来の成果を予想するものではありません。
- 最初に100万円を投資し、追加の積立はしない
- 信託報酬を引く前の運用成果が、毎年一定で年5%と仮定する
- 信託報酬を年0.2%と年1.5%で比較する(単純化のため、年率から差し引く)
- 期間は30年
| 信託報酬(仮定) | 差し引き後の年率 | 30年後の金額(概算) |
|---|---|---|
| 年0.2% | 4.8% | 約408万円 |
| 年1.5% | 3.5% | 約281万円 |
検算すると、100万円×1.048の30乗は約408万円、100万円×1.035の30乗は約281万円です。差は約127万円となります。コスト率の差は1.3ポイントですが、30年間で金額に大きな差が出ることが分かります。
試算の限界
この試算には、現実と異なる点があります。
- 実際の運用成果は毎年変動し、一定ではない
- コストの高い商品が成果で劣るとは限らず、コストの低い商品が優れるとも限らない
- 信託報酬以外にも、売買にかかる費用などが発生することがある
- 税金は考慮していない
低コストであることは、運用成果を保証するものではありません。ただ、コストは運用成果にかかわらず発生する数少ない要素であり、あらかじめ比較しやすい項目だという見方があります。
自分で試算する方法
コストの違いによる差は、複利計算で利回りを変えて確認できます。毎月積み立てる場合は、積立投資シミュレーションで仮の条件を入れて比べられます。
表の試算では、信託報酬を引く前の運用成果を年5%と仮定しましたが、実際の運用成果は年によって大きく異なります。プラスの年もあれば、マイナスの年もあります。そのため、実際の結果は、この試算のようにきれいな数字にはなりません。この試算は、コストの差が時間とともに累積するという構造を示すための単純化です。
もう1つ押さえておきたいのは、コストの差が影響するのは、運用でプラスの成果が出ているときだけではないという点です。運用成果がマイナスの年でも、信託報酬は差し引かれます。つまり、コストは成果と無関係に、保有している間は継続して発生します。
信託報酬の水準は、商品ごとに公表されています。目論見書や運用報告書には、信託報酬に加えて、その他の費用も記載されているため、合計でどの程度かかるかを確認できます。同じ種類の商品どうしで比べると、コストの差が分かりやすくなります。
ただし、運用内容の異なる商品を、コストだけで比べることは適切ではありません。運用の手間のかかる商品は、コストが高くなる傾向があります。コストに見合う内容かどうかを、自分で判断するための材料として、数字を使うことが大切です。
この試算を踏まえた確認の手順としては、まず保有する、または検討している商品の信託報酬を目論見書で調べます。次に、同じ種類の商品の水準と比べます。そのうえで、運用方針が自分の目的に合っているかを確認します。この順序で考えると、コストだけに偏らない判断がしやすくなります。
考えるときの視点とリスク
コストの低さだけで商品を選ぶと、運用方針が自分の目的に合わないことがあります。逆に、コストが高い商品にはそれに見合う運用内容が期待されますが、その成果は事前には分かりません。
- 信託報酬は、運用方針や投資対象とあわせて確認する
- 試算の利回りは仮定であり、実際には上下する
- 投資信託は元本が保証されておらず、損失が出る可能性がある
目論見書や運用報告書にはコストの内訳が記載されています。本サイトの方針は編集方針をご覧ください。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。