基礎解説
積立で育てた資産を使い始める段階の取り崩し方について、定額・定率などの型と、順序や税の注意点を仮の数字で整理する。
積立投資は、積み立てている間の話題が中心になりがちですが、いつかは増やした資産を使い始める段階が来ます。この「取り崩し」の段階は、出口戦略とも呼ばれます。積立の期間と同じくらい、値動きの影響を受けやすい場面でもあります。この記事では、取り崩し方の代表的な型と、考えておきたい順序や税の点を、仮の数字を使って中立的に整理します。特定の方法や商品を勧めるものではありません。
出口戦略とは何か
出口戦略とは、運用してきた資産を「いつ・どのくらいずつ・どの順番で」現金に換えていくかという計画のことです。積立期間中は、価格が下がっても買い続ければよい場面がありますが、取り崩し期間中は、価格が下がっている時にも生活費のために売る必要が出ることがあります。この点が、積立期間との大きな違いです。
取り崩しの計画を立てる前に、次のことを確認しておきます。
- 目的:生活費の補填なのか、住宅や教育など一度に使う資金なのか。
- 期間:何年くらいかけて使うのか。取り崩し後も運用を続けるのか。
- ほかの収入:公的年金や給与など、資産に頼らずに入るお金はどのくらいか。
取り崩し方の主な型
代表的な型には、次のようなものがあります。それぞれに長所と短所があります。
| 型 | 内容 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 定額取り崩し | 毎月または毎年、決めた金額を売却する | 価格が下がった時も同じ金額を売るため、資産の減りが早まることがある |
| 定率取り崩し | その時点の評価額に対して、決めた割合を売却する | 評価額が下がると受け取る金額も減り、生活費の見通しが立てにくい |
| 必要なときに必要な分だけ | 支出に合わせて、その都度売却する | 計画が曖昧になりやすく、売却する時期が価格に左右されやすい |
定額と定率を組み合わせて、上限と下限を決める方法もあります。どの型にも、将来の成果を保証するものはありません。
仮の数字で見る、定額と定率の違い
仮に、評価額が2,000万円あり、毎年120万円(月10万円)を定額で取り崩すとします。運用による増減がまったくないと仮定(年率0%)すると、2,000万円÷120万円=約16.7年で資産がなくなります。仮に年率2%で運用が続くと置いた場合は、21年目に尽きる計算になります。仮定の年率が低いほど、また実際の運用が仮定を下回るほど、資産が早く減ることがわかります。
一方、定率で毎年5%を取り崩す場合、評価額が2,000万円なら初年は100万円です。仮に評価額が20%下がって1,600万円になれば、取り崩せる額は80万円(1,600万円×0.05)に減ります。資産は急には尽きにくくなりますが、受け取る金額が減るため、生活費をどう調整するかを考えておく必要があります。
前提を変えて確かめたいときは、複利計算ツールで年数や利率を動かしてみる方法もあります。
順序のリスクと、売却の分け方
取り崩し期間で特に意識されるのが、「順序のリスク」です。同じ平均の収益でも、取り崩しを始めた直後に価格が下がるのと、後で下がるのとでは、資産の残り方が変わることがあります。取り崩しの初期に価格が大きく下がると、安い価格で多くの口数を売ることになり、あとで価格が戻っても資産が元の水準に戻りにくくなるためです。
この影響を和らげる考え方として、次のような工夫があります。
- 数年分の生活費に相当するお金を、値動きの小さい預金などで分けて持っておく。
- 資産の一部を、値動きの小さい資産に移しながら取り崩しを始める。
- 価格が下がった年は、取り崩し額を一時的に減らせるように、支出に余裕を持たせておく。
いずれも、リスクを完全に取り除く方法ではなく、影響を小さくするための選択肢です。
税金と制度の注意点
課税口座で投資信託を売却すると、売却額から取得額を引いた利益に、通常約20.315%の税がかかります。仮に、60万円で取得した分を100万円で売却した場合、利益は40万円で、税額は40万円×0.20315=81,260円です。毎年の取り崩しのたびに、利益に税がかかることを織り込んでおく必要があります。
NISA口座では、売却益が非課税です。また、売却した分の簿価に相当する枠は、翌年以降に再び使えます。ただし、制度は改正されることがあるため、最新の内容は金融庁のNISA特設ウェブサイトなどで確認してください。
考えるときの視点とリスク
- 値動きのリスク:取り崩し中も運用を続ける場合、価格は上がることも下がることもあり、資産の残り方は予想できない。
- 長生きのリスク:取り崩しの期間が想定より長くなると、資産が足りなくなる可能性がある。
- 支出の変化:医療費や介護費など、想定外の支出で取り崩し額が増えることがある。
- 税の違い:口座の種類によって、売却時の税の扱いが異なる。
- 見直しの機会:年に一度など、残高と支出を点検して計画を調整する。
どの型を選ぶかに唯一の答えはなく、資産額・ほかの収入・生活費の見通しによって適した考え方は変わります。メリットとリスクの両方を踏まえて、最終的な判断はご自身で行ってください。当サイトの情報の扱いについては編集方針をご覧ください。
この記事について:「基礎解説」の記事です。内容は公的機関などの出典と照らして確認することを方針としています。投資助言ではありません。誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。