本文へスキップ / Skip to content

競売・公売で不動産を買うには:初めての競売物件を、BITで見てみる

約10分で読めます

基礎解説 約10分で読めます 公開日 2026年11月1日

この記事の要約
競売サイトBITで物件を見るところから、入札のしくみ、高値づかみを避ける考え方、注意点、公売の見方までを、投資家への取材をもとに紹介。
目次
  1. 競売・公売って、何をするもの?
  2. ステップ1:競売サイト「BIT」をのぞいてみる
  3. 事件番号の「ケ」と「ヌ」の違い
  4. ステップ2:まず一度、裁判所に行ってみる
  5. ステップ3:入札のしくみ(東京地裁の例)
  6. 入札額は、自分で決める。ただし「高値づかみ」は禁物
  7. 知っておきたい注意点
  8. 公売も、ネットでのぞいてみよう
  9. まとめ
  10. 出典

不動産投資というと、不動産会社から買うイメージが強いかもしれません。けれど、裁判所が開く「競売(けいばい)」や、国などが開く「公売(こうばい)」に、一般の個人が入札して買う方法もあります。この記事は、編集部が不動産投資家への取材をもとに、「初めて競売物件を見てみる」ところまでを、順を追ってまとめたものです。特定の物件の購入をすすめる内容ではありません。

競売・公売って、何をするもの?

競売は、借りたお金が返せなくなった人の不動産を、裁判所が売って、お金を貸した人に分ける手続きです。売るときは、原則として入札で、一番高い値段をつけた人に売ります。公売は、税金を納めていない人の財産を、国税局や税務署などが差し押さえて、入札などで売る制度です。

どちらも、原則として、不動産会社でなくても、一般の個人が参加できます。競売は、個人が住民票などを添えて入札書類を出す扱いです(東京地裁の案内)。公売は、国税庁の公売情報サイトに「原則として誰でも参加できます」とあります。ただし、競売の債務者本人は入札できません(民事執行法68条)。

ステップ1:競売サイト「BIT」をのぞいてみる

まずは、気軽に見てみるところからです。裁判所の公式な競売情報サイトが、「BIT 不動産競売物件情報サイト」です(https://www.bit.courts.go.jp/)。物件を探したり、売却結果や過去のデータを見たりできます。

競売サイトで物件と3点セットを見る

物件ごとに、「3点セット」と呼ばれる資料があります。BITで見られます(東京地裁の案内では、3点セットの写しは入札期間の終わりまで閲覧できます)。

  • 現況調査報告書:土地や建物の現在の状況、住んでいる人の有無などを、写真つきでまとめたもの。
  • 評価書:周辺の環境や、評価額が書かれたもの。
  • 物件明細書:買った人が引き継ぐことになる賃借権などが書かれたもの。

3点セットを読むと、「こんな物件が、こんな条件で売られるのか」と、具体的にイメージできます。ここまでは、自宅のパソコンでできます。

事件番号の「ケ」と「ヌ」の違い

競売の物件情報や資料には、「令和○年(ケ)第○号」のような事件番号が書かれています。このカッコの中のカタカナを見ると、主な2つの手続きのどちらなのかが分かります。

事件番号の(ケ)は担保不動産競売、(ヌ)は強制競売を示すイラスト
事件番号の(ケ)と(ヌ)で、競売の手続きの種類が分かる
符号 手続きの名前 何にもとづく手続きか
(ケ) 担保不動産競売 不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行する手続き
(ヌ) 強制競売 判決、裁判所での和解・調停で決まった内容や、公証人が作った公正証書の内容を実現する手続き

(ケ)は、不動産に設定された抵当権などにもとづいて、担保を持つ債権者(お金を貸した側など)が申し立てる手続きです。(ヌ)は、担保がなくても、判決や公正証書などで決まった内容を実現するための手続きです。どちらも、売却の手続きそのものは同じです。このほか、共有物の分割などのために不動産を売る「形式競売」もあり、こちらは(ケ)か(ヌ)のどちらかの符号が付きます(秋田地方裁判所の説明書)。

取材した投資家は、「初心者は(ヌ)は避けたほうがいい。プロでもためらう案件だ」と話していました。(ヌ)は、裁判や調停などを経て始まることもある手続きです。投資家は、どんないきさつで競売になったのか、資料だけでは背景が分かりにくいことがある点を心配していました。

(ヌ)の物件を検討するときは、3点セットをていねいに読み、裁判所の窓口や不動産・法律の専門家にも相談してください。

※事件番号の符号は手続きの種類を示すもので、物件の良し悪しを直接示すものではありません。(ケ)の物件にも、住んでいる人がいるなどの注意点はあります。

ステップ2:まず一度、裁判所に行ってみる

取材した投資家は、「やり方が分からなければ、裁判所で聞けばいい。そんなに難しいことではないので、一度トライしてみてはどうか」と話していました。入札には書類が必要で、どのみち裁判所に書類を確認しに行くことになるから、まず一度行ってみてはどうか、という考え方です。

まず一度、裁判所に行ってみる

東京地裁の場合、入札書類は民事執行センターで配布されていて、同じ窓口(執行官室)で相談もできます。入札書などの書式はBITからダウンロードできますが、実際に必要な書類は、入札したい裁判所に確認するよう案内されています。手続きの細かい部分は、裁判所によって違います。

ステップ3:入札のしくみ(東京地裁の例)

競売の入札は、決められた期間のあいだに入札書類を出し、あとの開札日に結果が決まる「期間入札」です。以下は、BITに載っている東京地裁の例です。日数は、他の裁判所とは違うことがあります。

入札の手順を一つずつ確かめる
  1. 保証金を振り込む。裁判所が指定した方法で、入札期間中に、保証金を振り込みます。入金が済んでいないと、入札は無効になります。
  2. 入札書類を出す。入札書類は、執行官室に持っていくか、郵送で出します。入札書は、あとから取り消したり、書き直したりできません。
  3. 開札。執行官が、一番高い値段をつけた人(最高価買受申出人)を決めます。
  4. 売却許可の決定。原則として、開札の約20日後に、裁判所が売却を許可するかを決めます。
  5. 代金を納める。入札した金額から保証金を引いた残りを、一括で払います。期限は、通常、許可の確定から1か月ほどです。
  6. 所有権の移転登記。移転登記は、裁判所が手続きをします。費用の負担は、裁判所の案内で確認してください。

代金を期限までに払わないと、売却の許可は効力を失い、保証金は返ってきません(民事執行法80条1項)。

入札額は、自分で決める。ただし「高値づかみ」は禁物

競売の面白いところは、入札する金額を自分で決められることです。ただし、決められる範囲があります。

相場を調べて、入札額の上限を決める
  • 裁判所が決めた「売却基準価額」があります。
  • 入札できるのは、その8割(買受可能価額)以上の金額です(民事執行法60条3項)。
  • 入札のときに納める保証金は、東京地裁の案内では、売却基準価額の10分の2以上(通常は2割)です。具体的な額は、物件ごとの公告で確認してください。
  • 一番高い値段をつけた人が、買う人になります。

ここで、取材した投資家が強調していたのが、高値づかみをしないことです。人気のある物件には、入札が集まることがあります。けれど、相場を知らないまま、相場より大きく高い値段で入札してしまうと、もったいないことになります。競売は、入札を取り消せないため、相場の見当をつけたうえで入札額を決めることが大切です。

相場の調べ方の例は、次のとおりです。

  • 同じエリア・同じような広さと築年数の物件の「成約事例」と比べる。
  • 賃貸に出す場合は、近くの家賃を、賃貸ポータルなどで確かめる。
  • リフォームや、不具合の修繕の費用を、余裕をもって見込む。

入札の結果は、BITの「売却結果」でも見られます。どのくらいの金額で売れているかを、入札する前に、いくつか見ておくと参考になります。

知っておきたい注意点

競売は、通常の売買とは違う点があります。取材の話に加えて、裁判所や法律の資料で確認できた点をまとめます。

買う前に、現地と書類を確かめる
  • 住んでいる人がいることがある。買った人は、占有している人に引渡しを求められます。代金を納めてから6か月以内(一定の場合は9か月以内)なら、裁判所に引渡命令を申し立てられます。ただし、買った人に対抗できる権利で住んでいる人には、出せません(民事執行法83条)。
  • 建物の中を見られるとは限らない。内覧の制度はありますが、お金を貸した人(差押債権者)の申立てが前提です。住んでいる人が賃借権など対抗できる権利を持つ場合は、その人の同意がなければ実施されません(民事執行法64条の2)。3点セットは、限られた調査にもとづく参考資料なので、現地を見に行くことも大切です。
  • 物件の種類や品質の不具合は、買った人が負う。競売では、物件の種類や品質に関する不適合について、通常の売買のような責任追及の規定が適用されません(民法568条4項)。
  • マンションの場合は、管理費・修繕積立金の滞納に注意。買う前までの滞納分は、買った人が払う必要があります(BITの用語集)。
  • ローンを使うには、手続きがある。金融機関と抵当権設定契約を結ぶ方法で、ローンを使える制度があります。代金を納める前に、裁判所へ申出書を出す必要があります。ローンが借りられるかどうかは、金融機関に確認してください。
  • 代金は一括で納めます。分割はできません。

こうした点は、一人で悩まずに、裁判所の窓口や、不動産・法律の専門家に相談しながら確認してください。

公売も、ネットでのぞいてみよう

公売も、同じように見てみるとよい、というのが取材した投資家の考えでした。国税庁の公売情報サイト(https://www.koubai.nta.go.jp/auctionx/public/index.php)には、土地、建物、土地付建物、区分所有建物(マンション)、農地といった不動産が出ています。インターネットで見られるので、どんな公売が出ているか、今の状況をのぞくだけでも勉強になります。

公売の物件情報をネットで見る

公売の主なポイントは、次のとおりです。

  • 公売の日の10日以上前に、公告が出ます(国税徴収法95条)。
  • 入札のとき、「公売保証金」が必要になることがあります(額は公告で決まります)。落札できなかった人には、返されます(国税徴収法100条)。
  • 見積価額は、近くの似た物件の取引価格などを考慮して決められます(国税徴収法98条)。
  • 税金を滞納している本人は、買い受けられません(国税徴収法92条1項)。
  • 公売の妨害や談合などをすると、2年間、入札が禁止されることがあります(国税徴収法108条1項)。

入札の方法や保証金の額は、物件ごとの公告で決まっています。参加する前に、必ず公告を読んでください。自治体が開く公売では、取扱いが違うことがあります。

まとめ

  • 競売・公売は、一般の個人も参加できる、不動産を買う方法の一つ。
  • まずは、BITで物件と3点セットを見てみる。気軽に、のぞくところから。
  • 事件番号の(ケ)は担保不動産競売、(ヌ)は強制競売。初心者は(ヌ)を避けたほうがいい、という投資家の声もある。
  • 入札書類や手続きは、裁判所で教えてもらえる。一度行ってみる、という考え方がある。
  • 入札額は自分で決められる。ただし、相場を知らずに高値づかみをしない。
  • 住んでいる人、建物の中、管理費の滞納、ローンなど、通常の売買と違う注意点がある。
  • 公売も、国税庁のサイトで状況をのぞける。

※この記事は教育目的の情報で、特定の物件の購入や売却をすすめるものではありません。競売・公売の制度や運用は、裁判所や徴収機関によって異なり、変わることがあります。実際の判断は、必ず最新の公告・資料を確認し、必要に応じて専門家に相談したうえで、ご自身の責任で行ってください。

出典

  • BIT 不動産競売物件情報サイト(裁判所):「入札等の手続について」、用語集(滞納債務、ローン制度、法82条2項の申出)
  • 裁判所「不動産競売」案内ページ、東京地方裁判所「買受けの手続(不動産)」
  • 秋田地方裁判所民事部「競売ファイル・競売手続説明書」(BIT掲載):担保不動産競売事件(ケ)と強制競売事件(ヌ)、形式競売の説明
  • 民事執行法 60条、64条の2、68条、80条、83条、民法 568条(e-Gov法令検索)
  • 国税庁 公売情報サイト、国税徴収法 92条、95条、98条、100条、108条(e-Gov法令検索)

参考になったら、押して教えてください(匿名・1回)

次に読むなら

基礎解説リフォーム約5分

リフォーム業者の選び方:相見積もりと、費用が後から増えないための3つの約束

リフォームで大切なのは、安く安心して任せられる業者選び。業者の探し方、2〜3社の相見積もり、費用が後から増えないための3つの約束(仕様を決める・追加費用の線引き・記録に残す)を、投資家への取材をもとにまとめます。